世の中は不公平だと思うだろうか?

 

毎日一生懸命に働いているのに

なぜ私はこんなに給料が安いのか?

 

私は、あらゆる仕事の報酬は、

得られるもの全体で見れば

ほぼ同じだと思っている。

 

企業人事の世界には、

「トータルリワード」という言葉がある。

 

トータル=全体的、包括的な

リワード=報酬、見返り

 

「報酬、見返り」というと

「給料」だけを考えがちだけれど、

福利厚生、各種手当、株の分配など

もっと色々な面からトータルで考えて

魅力的な報酬パッケージにする考え方だ。

 

この解釈をさらに広げてみると、

私の言いたいことが伝わると思う。

 

私はオーストラリアに来た当初、

世界中の若者が英語を学ぶ語学学校で

生徒たちをサポートする仕事に就いた。

 

この仕事を一言で表すと、

毎日が「ありがとう」のシャワーだ。

 

「どうしたの?」

「まかせておいて」

「はい、どうぞ」

「どういたしまして」

 

これを繰り返しているうちに

あっというまに一日が終わって

「あぁ、今日もたくさん人の役に立った」

と感じながら家路につく。

 

さらに驚くことに、

必要な知識やスキルの引継ぎは

たった1週間でできてしまった。

 

今の人事の仕事は、そうはいかない。

5~6年の人事経験があったものの

3か月経った今でも知らないことだらけだ。

 

長期スパンで考え、分析し、行動する。

グローバルで大きな組織だからこそ、

自分で判断できる範囲も限られているし、

1日中パソコン仕事で、身体も鈍りがちだ。

「ありがとう」を耳にする頻度も低い。

 

だけど、給料は2倍以上になった。

社会的にも、経済的にも、

割とステータスの高い業界・職種だ。

 

もしもこの2つの仕事が同じ給料なら、

社会的なステータスも存在しなかったら、

どちらの仕事を選ぶ人が多いだろうか。

 

想像するのは簡単ではないけれど、

何重にも重なった色眼鏡を外して、

子どものように素直な視点で考えてみてほしい。

 

私は、前者を選ぶ人が多いと思う。

 

高いお金を払って良い大学に行かなくても

何年間も知識や専門性を身につけなくても

オフィスでパソコンとにらめっこしなくても

上司や他部署との交渉に気を使わずとも

人の役に立ち、感謝されつづける。

 

脳科学の研究によれば

誰かに感謝されることの快感レベルは

ヘロインや覚せい剤よりも強いらしい。

 

たとえ金銭的な報酬が低かったとしても、

感謝される快感や、ストレスの低さ、

スキルや知識を身につける時間投資の少なさ、

働く時間や期間の柔軟性など、

実は目に見えない報酬をもらっている。

 

数億円稼ぐスポーツ選手に憧れても、

そこにたどり着くまでの20年間の努力を

あなたはしたいと思うだろうか。

 

人気歌手をいくら夢に見ても、

毎日毎日同じ歌を同じ順番でうたって、

ツアーで家族や恋人と離れ離れな生活を

あなたはしたいと思うだろうか。

 

医者の給料がいくら高く見えても、

十数年間も必死に勉強し続けて、

病気の人や患部と毎日向き合えるだろうか。

 

そうやって考えてみると、

トータルで見ればどんな仕事も

報酬はほぼ同じようなものである。

 

あなたの仕事の給料が安いと感じたら、

他にどんな仕事がしたいか考えてみよう。

 

その仕事にたどり着くまでの道筋、

実際にその仕事をしている自分の1日、

その時に感じている心理状態を、

目を閉じて想像してみよう。

 

それでも「やりたい」と思うなら

それが答えだ。

 

「そこまでしたくない」と思うなら

それも良し。

 

生活に最低限必要な金銭だけ得ていれば、

あとのさじ加減はあなた次第。

 

普通の人なら嫌がることなのに、

「そんなに嫌じゃない」「むしろ楽しい」

と思えるポイントがあれば、

それはあなたに恵まれたチャンスだ。

 

トータルな報酬を最大化できるのは、

そういう特異点を見つけた人だと思う。